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「紅白」育ての親、川口さん「4時間は長すぎる」
 大みそか恒例のNHK紅白歌合戦は、今年で60回と還暦を迎える。かつての紅白はどんな演出が施され、どのように国民に愛されていたのだろう。テレビ生中継が始まった第4回(昭和28年)から番組制作に携わってきた元NHK会長、川口幹夫さん(83)に、草創期から成長期の紅白を振り返ってもらった。

◆100年番組の予感

 紅白は昭和26年1月3日夜に第1回のラジオ放送が始まった。前年にNHKに入った川口さんは、福岡の独身寮でラジオに聞き入っていたという。「紅組と白組で7人ずつ分かれての生放送。新鮮で面白かった。いや、これはスゴイ番組だなと仰天しました」
 28年にテレビの本放送が始まると東京に転勤する。暮れも近づいたころ、上司から「紅白をやる。担当しろ」と突然、言われた。アシスタントディレクターとして、応援合戦や選手宣誓といった今の紅白にも通じる演出を編み出すなどして大みそかに備えた。
 「強烈に寒い日でした」
 当日は、東京・有楽町の日本劇場の観客席の一番後ろにあるメーンカメラのそばにいた。レシーバーを耳にあて、舞台とやり取りをするものの、声がよく聞き取れない。「2000人はいただろうが、目の前の超満員の観客が異様な盛り上がりを見せていた。私もつられて何か叫ぼうと思わず持ち場で立ち上がった。その瞬間に、今後100年は続く大型番組になる予感がしました」

◆驚きの81・4%

 この経験を踏まえ、「歌手の歌唱力にプラスアルファで笑いをとるよう番組で仕組むのが、テレビという新しいメディアの効能ではないか」と考えた。
 川口さんがチーフプロデューサーだった第14回(38年)には、画期的な仕掛けで注目を集める。翌年に控えた東京五輪をもり立てようと、俳優の渥美清さんを“聖火ランナー”に起用。日比谷公園を出発して、紅白の会場だった有楽町の東京宝塚劇場にゴールインする様子を番組の冒頭に放送した。
 これが大当たり。前年からビデオリサーチが記録を取り始めた視聴率は、空前の81・4%にも達した。
 川口さんは舞台の袖でじっと見守った。「瞬間的には95%に届いたのではないでしょうか」。紅白は国民的番組に成長した。

◆過去を乗り越える

 そんな川口さんにとって、最近の紅白には首をかしげることが少なくないそうだ。「あれもこれもと企画を詰め込みすぎて、番組にしんがない。演出のスタイルも、観客を沸かせるための方程式を作りすぎではないか」と指摘する。
 放送時間についても「4時間は長すぎる。見る方もくたびれる」と、平成になってから午後7時台のスタートになったことには納得がいかないようだ。
 「主婦の方たちは正月の準備で大みそかは大忙し。昭和のころのように、準備の落ち着いた午後9時から始めるのがちょうどいい」と、視聴者への心遣いが不可欠と訴える。
 「番組の善しあしの尺度は、視聴者の満足度にあるんです。たとえ、視聴率がゼロに近くなっても、制作現場の若手には、過去を乗り越える新機軸を打ち出してほしいものです」。その厳しい言葉の裏には、紅白に対する変わらぬ深い愛情が込められていた。

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